湯河原というと熱海のような俗っぽさがない、ちょっと上品で落ち着いた場所というイメージがある。小ぢんまりした老舗の旅館が点在する静かな温泉地。
上野屋も、古風な日本旅館の佇まい。古い木造旅館というと、外観から意匠の凝った造りを期待しちゃうので、第一印象は、ちょっと素っ気ないんじゃないのと思ってしまうような気がしないでもないけれど、一歩中に入ると、日頃のメンテナンスと掃除が行き届いてるんだろうね。床は光を柔らかく反射し、柱も階段もつややかで時間の染込んだ風情がいいかんじ。こういうところに宿屋さんの姿勢が出て来るんだよな。フケツだと最低の化け物屋敷みたいな印象になっちゃうし、「酷い客扱いでお迎えします」なんて言われているみたいに先入観を持ってしまうから(大抵は、それで当たっているんだけれどネ)
フロントじゃなくて帳場、帳場の中に貼ってある内線表には従業員控室じゃなくて女中部屋と書いてある、ロビーじゃなくて談話室、仲居のオバチャンの制服も着物でも最近流行の作務衣じゃなくて事務服っぽい白いうわっぱり。もう、建物だけじゃなくて全ての時間の流れが遅く世間とはずれてしまっているみたい。あ、これって悪い意味じゃないよ。なんかさ、館内どこを触れても懐かしいんだよな〜。子供の頃に泊まった宿を思い出しちゃったりして。こう、胸を真綿で締められるような気分・・・って、「真綿で締められる」という言い方は悪い意味を表す言葉かぁ。うぅ〜ん、なんと言ったらいいのかな、こういうときってレトロというお手軽な表現が便利で、書いてしまいがちなんだけれど、それじゃ面白くないぞ〜。う〜ん、レトロねぇ、この言葉は使いたくないなぁ。なんかもっといい言葉はないか?自分の中で解釈しているレトロとは違うんだよ、この宿の雰囲気は。そんな薄っぺらじゃなくて時流に倣うことなく残っているものなんだよな。あっ!もう3回もレトロという言葉が入っている!!それに今ので更に1回増えた!!!えぇ〜い!、気の利いた言い回しを考えていたら億劫になってきたぞ。もういいや、ありきたりの言い回しでも、とにかく、鉄筋の旅館じゃ絶対に味わえない趣がイイ!歴史を感じさせる建物が好きな人には堪らないでしょう。かく言う自分も、館内のあちこちを見て「おっ、障子の桟に微妙な傾斜がつけてあるぞっ」とか、「あ、こんな長い一枚板なんだ」とか、もうワクワクしちゃってシカタナカッタよ。 次は客室へ》》》
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