最近、ちゃっちい露天風呂を部屋のベランダにくっつけただけのペンションまがいとか中身の伴わないとりあえず時流に乗ってみた擬似古民家系やアジアン系の宿がもてはやされているけれど、この宿はそれらの対局に位置する伝統的な形式を保つ温泉旅館という印象。前述のような見た目の目新しさにだけが頼り薄っぺらな宿に喜ぶというのは、大昔の歓楽温泉旅行に惹かれる感性と同じ根本を持っているような気がする。じゃあ、そういう今風(笑)のものを好きな人が大橋に泊まると満足できないかというと、そうではないと思う。なぜなら、宿のタイプ云々関係なしの基本的な部分のレベルが非常に高いところにあるからなのだ。
例えば、メールでの問い合わせにも必ず数時間以内に返信があり、「旅館大橋」という旗を持って駅まで迎えに来てくれた車の運転手さんは、少し遠回りをして三朝の温泉街や土地の話をして案内してくれた。宿に着けば、フロントから仲居さんまで終始笑顔で礼儀正しい対応など挙げればきりがない。風呂で接触のあった従業員はかなりお粗末な態度だったもののこれは稀な例外で、全体の接客レベルはかなり高い。料理の供し方にも問題はあったけれど、そのマイナスが霞むくらい、味自体は非常に良かった。この他にも実は不備な点が幾つも散見できるのだけど、それを帳消し、いや、補って余りあるほどの底力が感じられる。充実したソフト面に自然湧出の温泉風呂が備わっているのだから強いよな。サービス重視派・温泉の質重視派、どちらもかなり満足できるであろう宿は、そうそう存在しないと思う。
鳥取方面で旅行に行くのなら是非にとオススメ。
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