静岡県吉奈温泉 芳泉荘
         2003年4月下旬土曜日¥15000(サ別)

■第一印象は


サイズ縦横バラバラスライドショー








離れ外観





離れ玄関
カーソルを当てると客室からの眺めに
写り悪いけれど目の前は渓流です








古い建物が好きな自分は、数年前にこの宿の脇を通る道から建物を見たことがあって、それ以来気になる宿だったんだよな。
花の咲く木々と新緑に囲まれた佇まいは、とにかく静かでまさに隠れ宿って形容がぴったりくる感じだなぁ。
車で玄関に乗り付けると間髪入れずに若主人ご夫婦が笑顔で迎え出てくれる。待ち伏せしていたかのようなグッドタイミングで、それはもうどこかにセンサーでも仕組んでいるのではないかと思ってしまうほど。
予約の電話での若女将の対応もそうだったんだけれど、気取りがなくて、でも、きちんとしていて、元気な印象。ここで仏頂面だったり、バカ丁寧なお出迎えをされると「ハズレ宿かも」なんて先入観を持ってしまうからね。やっぱり第一印象って大事なんだよな〜。車の移動は若主人が、客室(離れ家)への案内は若女将がしてくれる。このあたりの手際はなかなかに良くて、この時点で「あ、期待して大丈夫かも」なんて感じた。車から降りると、本棟には立ち寄らず、直接、離れ家に通される。これはいいよね。ほら、よくあるじゃない、ロビーで宿帳を記入したものの、客室への案内で延々待たされてイライラするなんてパターンがさ、。まだ、腰が落ち着く態勢でもないのに抹茶飲まされるとかね、これって“勘違いもてなし”な感じがしてイヤなんだよな。「とっとと部屋に通してくれよ」なんて思わない?その点、ここんちはストレスなしでいいね。本棟から離れ家まで20m弱くらいしか離れていないから、大型旅館よりも移動距離は少ないってことになるのか、やっぱ歩く距離は少なくてラクなほうがいいもんな。そして、宿帳記入が終われば、宿の人が客室にまず入ってこないのもありがたいよなぁ。荷物も広げっ放しのまんまでいいし、何も気にすることなく、あ〜んな格好やこ〜んな格好で和んでいられるからね。え、どんな格好するのかは好きに考えて頂戴、多分、そのとおりだから。ウハハハ。
しかし、この離れ家が広いぞ〜。壁で仕切られ独立した6畳×3室、男女別のトイレ、温泉を引いた風呂で構成されている。建物自体は古い造りなんだけれど、基本的な掃除が出来ているし、洗面所もお湯がきちんと出てくるし、洋式便座はヒーター付きだし、各部屋にエアコンとテレビも備え付けられているから何の不都合もないしね。玄関には打ち水がされてるのが、もてなしの気持ちの表れでしょう。フムフム、玄関側から、食事室、寝室、居間という形に用途を分けて使うのか。寝室には予め布団が敷きっ放しなのもありがたいねぇ。疲れていたら直ぐにうたた寝できるじゃない。実はこれってポイント高いんだよなぁ。一番奥にある居間の広縁からはツツジの花越しに渓流が見える。川の流れる音と時折聞こえる気の早い河鹿の声が・・・。離れだから壁越しに隣の部屋の騒音が聞こえることもないし、静かでいいね。しかし、広縁の窓ガラスのヒビが入っているのを布テープをベッタリ貼って補修しているのはイケマセンなぁ。これが椅子に座ると一番目につく場所にあるから気になるし「おやおや、どうして?」って思ってしまう。こういうのを上手に補修するリペアキットって売っているし、それが難しいなら目立たない部分のガラスと入れ替えればいいのに、これって難しいことなんだろうかね?こんなの些細な事なんだけれど、他の部分がいい印象なだけに余計に目立っちゃうんだよな、ホント勿体無いぞ〜。部屋風呂はユニットタイプのフツーの造り。でも、通常より一回り大きめサイズ。窓の位置がもうちょっと低ければ湯船に浸かりながら渓流が見渡せるのになぁ。ちと残念。そうだ!書き忘れそうになったけれど、ここの宿のお湯は全部天然温泉を利用しているんだぞ。部屋の風呂も、洗面台の湯も全部温泉で使い放題だなんて最高に贅沢だわなぁ。
本棟の建物は、いい具合に時間が木材に染込んでいて味があるね。旅館っぽくない造りだなぁと思っていたら、元々は某企業の社長の別荘として建てられたんだって、なるほどね。どうりで帳場もロビーもないわけだ、なのになぜか広々としたホールがあって、これは遊戯室として使われていたんだそうだ。すっげぇ金持ちだったんだな、ここを建てた人って。
サンルーム風の談話室には昭和初期の扇風機(まだ動く!)や鏡、温度計が飾ってあって、古い物が大好きな自分は、眺めているだけでも卒倒せんばかりのヨロコビなんだけれど、幅が一間ある窓側のスペースに金魚の水槽が2つ、扇風機、小さな置物がぎっしり並べられているボックス型の棚が2段が差ねで置いてあるのは賑やか過ぎるような気がするぞ、なんかゴチャゴチャしていると所帯臭くて、宿全体の雰囲気から浮いている感じがしちゃうんだけれど、どんなもんなんだろうな?自分だったら、アンティークな扇風機以外は片付けて和洋折衷風の花器に野の花を生けて飾りたいところなんだが、ま、ここらへんは個人の趣味志向だし、別に死ぬほどの問題ではないから、大きなお世話だいね。ハハハ・・。でも、ここ以外は館内何処も全体的に簡潔ですっきりとした印象があっていいだけに、なおさら談話室の雑多な賑やかさが目立っちゃうんだよなぁ。あぁ、こんな細々としたことをイチイチ言うなんて兄嫁イビリが趣味の小舅みたいだな。我ながらヤダヤダ・・・。
■貸切風呂なんだ〜
縦横メチャメチャスライドショー
途中で出てくる機械は体重計

風呂は本棟にある露天付きが一ヶ所のみ、貸切で利用するんだけれど、最大でも4組の客しかいないから、混み合うこともないでしょう。元々はパブリックの風呂だったからどこも広いのだ、大理石で枠取りされた湯船は大人三人が入れるサイズ。底から無色透明で癖の少ない温泉が滾々と湧き上がり掛け流し。そんな中で両手両足を伸ばしてボ〜っとしていると、これまたいい湯加減でさ、癒されるとはこういうことなんだなんて思ったりして。上を見上げれば湯屋建築独特の湯気抜きのある高い天井。いい気分だ〜。
併設されている露天風呂は岩造りで大人七〜八人は楽勝で入れる、お湯は当然掛け流し。川を挟んで50m位先に道路が通っているんだけれど、これだけ離れていれば望遠鏡ででも覗かなければ、誰が風呂に入っているのか分からんだろうし、なにより木々が茂っているからモロ見えの心配はないぞ。でも、対岸にあるプールが目障りかなぁ、夏は予約があれば稼動するそうなんだけれど、そうなったら落ち着いて入浴出来なくなるかもね。自分だったらプールを巨大な植木鉢に見立ててワサビ田にして、夕食時に「当館で育てたワサビです」なぁ〜んて一言添えて出して、ついでに蛍の幼虫も育てて、夏には風呂に浸かりながら蛍の乱舞が見えるようにしちゃうんだけれどなぁ。まあ、実際は色々な問題をクリアしなければ出来ないことなんだろうけれどね。所謂、シロウト考えの浅はかさかな♪
なんのかんの好き放題に言っているけれど、風呂に浸かると水面は見えないものの、耳からは川のせせらぎ、目にはツツジの花と緑の隙間から見える満開の藤棚。夏になると蛍見風呂になることもあるそうで、いいぞぉ、この露天風呂。
■ご飯だ























今回、写真撮影に失敗しましたので
同行者から画像を借りて入れ替えしました
夕食のメニューを書きます
左の四角い箱(山葵味噌、山葵の茎、蛸山葵、猪のソーセージ)、
モズク酢、生桜海老、生シラス、豚バラ角煮、
刺身(伊勢海老、鮑、烏賊、鮪、サザエ、生ワサビ)、ズワイガニ大皿盛
(刺身、カニは三人前です)
後出しで、
牛ヒレステーキ、天麩羅(一人に一匹の大伊勢海老、山芋、オクラ)、ウナギ蕎麦
リキュールのかかったアイスクリーム

朝食のメニューは
厚焼き玉子、シラスおろし、納豆
蒲鉾、鯵干物
伊勢海老頭入り味噌汁

画像提供:toshi-pさん
Special Thanks!

料理は、生ワサビ一本が添えられた伊勢海老活き造りやアワビの刺身、大盛りのカニもどどぉ〜んと並んで豪華だぞ。後出しで温かい料理を運んできてくれるのも心遣いだね。離れ家形式だから調理場と部屋の往復だけでも結構な重労働になるだろうに、そう考えるとありがたいなぁと思ってしまう。大きめサイズの伊勢海老の天麩羅が出てきて最初の見た目はインパクトあっていいんだけれど、身が一本のまま揚げられているのは食べ辛いかな。身は噛むほどに甘く、胡麻油で揚げてあるから、とても美味しいんだけれど、「美味しい!」と同時に「食べ辛いな」とも思ってしまう。大きな海老にかぶりつく楽しさも味わってほしいとのことなんだけれど、なんかこれって強要されているようで、どうもねぇ・・。横着者としては、やっぱり食べ易い大きさで出されたほうがいいなぁ。牛ヒレステーキは柔らかく、ソースも美味しい。御飯が最初に出されるのも嬉しい、大抵はさ、最後に汁物と一緒に出されるじゃない、そうすると何をおかずに食べればいいの?状態になって困るから、御飯の先出しはいいよね。
朝も伊豆の定番、鯵干物、カマボコに加えて伊勢海老の頭入り味噌汁まで出てくる豪華さ!素朴な味わいの厚焼き卵もグー。
献立の中にワサビが多用されているのも中伊豆ならでは、生桜海老と生シラスも駿河湾の特産でしょう、こういう地方色が出ている献立を食べると、ああ、旅に出たんだなぁと実感できるから、自分は好きだね。全体的には、技巧派で勝負というよりは、う〜ん、野球で例えるとストレートの豪速球タイプの印象かな。
宿代から考えると「大丈夫なの?」「やっていけるの?」と訊きたくなるほどの充実ぶりで、満足度高し!
■泊まって思うこと






どうしてこんな風に写っちゃうんだ(恥)
でも、雰囲気あるでしょう♪




対岸から撮った露天風呂
ね、これだけ木の枝が茂っていたら
見えそうもないでしょう

伊豆の温泉宿には、(料金が)高くていい宿はあっても安くていい宿は存在しないと確信していたんだけれど、探せばあるんだね。こんなに奥深い土地だとは・・・。今まで何度も痛い経験をしてきたから先入観が・・・ね。う〜む、まだまだ青いな自分。
こちらの若主人が先代から経営を引き継いで5年、以前は一泊\25,000の料金だったのを、旧来の旅館料理を止め、家族だけで切り盛りして人件費を、仕入先を変え原価を抑えるなどの努力をして、今の\15,000という料金にまで下げることが出来たのだそう。旧態を打破し新しい道を切り拓いてているんだね。いやぁ〜、改革、改革と口ばかりで実の伴わない何処かの国の総理の純一郎クンと大違いだぜ〜。
ただ、料金を下げるだけではなく、「いい宿にしよう」という熱意のある人みたい。客の率直な感想を聞き、出来ることなら即座に対応する姿勢、それが若し厳しい内容でも悪口とは受け取らず改善のヒントにしようとしているのは、素晴しいと思う。だから尚更に、インの時にきちんと呈茶してくれるのに浴衣のサイズが合っているか訊いてこなかったり、夕食時に冷水やお茶の用意がなかったりが残念なんだよな。これは本当に些細な事柄だし、こちらから何かをお願いすれば迅速に笑顔で対応してくれるから問題ではなく、何もかも若夫婦二人で切り盛りしているから仕方ない部分なんだろうなぁと理解は出来るんだけれど、やはり「ここまでいい宿なのに勿体無い!」と思わずにはいられない。あ゙〜っ、また兄嫁イビリの小舅チェックのようになってきた・・。なんかこう書くと、気の利かない対応の宿なんて誤解されちゃいそうだけれど、そんなことは全然ないぞ!例えば、場所柄、夜は虫が浴室の灯り目指して侵入して来るんだけど、女性客が入浴中に不快に感じないようにマメに浴室のチェックをして虫の駆除を行うようにしているそう、これって、客の立場になって考えないと面倒臭くてなかなか出来ないことじゃない?この気持ちがある限り、これからどんどんいい宿になってゆくんだろうな。ただ、最後にひとつお願い。料金表示はサービス料込みで表示して欲しい。サービス料込みで料金を表示している宿が殆どなので、サービス料が別に請求されると、支払いの時に損したような気分になっちゃうから。\15,000(サ別)も\16,500(サ込み)も実際に支払う金額は同じなんだけれどさ。最後の最後で客にマイナスの印象を与えかねないような気ぃするんだけど、どうだろう?
周囲の環境は静かでとてもいい、笑顔で正直な対応、料理も美味しく、温泉は良質で掛け流し、尚且つ、その温泉を引いている風呂のある離れに泊まってこの料金は安い、いや、安すぎるでしょう。客室数が僅か4室しかなくて、あっという間に予約が取り辛くなっちゃいそうだから、この宿のことは秘密にしていたい気もするけれど、えぇ〜い、喋っちまえ!とにかく設備が新品じゃなければイヤな人じゃなければ、大晦日以外は料金通年同額というかなり良心的な料金だし、超オススメ。でも、泊まった後でこの宿のことを他の人に教えちゃダメだぞよ。これ、約束ね。

後日、このHPをご覧になった、若主人さんからメールが届きました。その内容はこちらにあります