岩手県松川温泉 松楓荘
         1999年3月¥8000と2000年2月¥9000

                            ■雪に癒される旅



















上下はスライドショーです

























カーソルをのせると朝食になります







カーソルをのせるとなつかしのボンネットバスに
関東在住の自分にとって、雪見の温泉というのには、どうにも憧れてしまうんだよな。
だから冬の旅は、雪深い土地へ行くことが多いんだ。しんしんしんと降る雪をただぼんやりと眺めて過ごすのに憧れてしまったりしてね。
盛岡から麓のバスターミナルまでは、大型バスが運行しているんだけれど、ここから先は旧型のボンネットバスに乗り換えるんだ、運転手さんに訊いたら、松川温泉までの道は勾配のある急カーブの連続する圧雪路で、新型のバスだとパワーが余りすぎてスリップし易いから、非力なこの車のほうがいいのだそうな。決して観光向けで走らせているのではないとのこと。かなり年季の入った車両だから、このまま座り続けていると痔疾を患ってしまうのでは?と確信させてしまいそうなほど強烈なビリビリとした振動とガーッと悲鳴を上げているようなエンジン音は何とも凄すぎるんだけれど、深山の秘湯へ向かっているんだという気分が盛り上がってくるから、乗っているだけで何気にワクワクしてくるんだよな。スピード出ないうえに、おそろしく乗り心地が悪いのに、不思議。
松川温泉には3軒の旅館がある。松楓荘はその中の一軒。バス停から続く私道を雪に足を取られないように数分歩くと宿が見えてくる。川の流れを脇に従え、雪深い斜面にの底にひっそりと湯煙を上げながら建つ姿は、まさに“秘湯”という佇まい。バスを降りてから、わずか数分歩いただけなのに物凄い山奥にワープしてしまったような錯覚すら感じてしまう。土日の日中は日帰り入浴の客で賑わうんだけれど、平日は人も少なくて、川と雪と風の音しかしない静寂境。何の計算も演出もない景色は見ているだけで気持ちが癒されてゆくような気がするんだよね。雪囲いをしているから薄暗い館内も結構鄙びた雰囲気。ギシギシ鳴く廊下を歩いていると窓の外から、バサッと雪が落ちる音がしたりして、「今、自分は雪深い土地にいるんだ」なぁんてシミジミ思ったりしてね。ここんちの客室は窓が大きく取られているのがイイんだけれど、この時期の1階の客室の窓の半分は雪に隠れてしまうんだよね。地元の人にはどうってことないんだろうけれど、殆ど雪の降らない土地に住んでいる自分は「趣あるじゃ〜ん」なんて感じちゃうんだよ。2階の客室からは渓流と対岸の斜面の雪が見え、軒先には大きなツララが下がっていて、これもまたよろしなんだよなぁ。

湯治場の雰囲気が残る内湯もステキなんだけれど、やはり渓流沿いの露天風呂と吊り橋を渡って行く洞窟風の岩風呂がいいやねぁ。少し時間が経つと髪の毛がバリバリに凍ってしまうほどの冷気の中、首から下は温泉でホカホカと暖かくて、空を見上げればグレーの空から輪郭が浮かび上がるように雪が果てしなく降り続けて、その世界に自分がいると考えると何とも満ち足りた気分になっちゃったりして。ここんちの風呂の素晴らしさは言葉で言い表せない魅力があるんだよなぁ。最新の設備は何もないのに不思議だよね。

食事は、いかにも山の宿の料理なんだけど、全品手作りで、その土地を感じさせるものもあるし、何品かは後出ししてくれるし、料金から考えれば「頑張っているんだなぁ」と思うよ。朝は、いつ泊まってもほぼ同じ内容でこちらは、ちぃとばかし残念なんだけれど、ま、それを言ったらキリがないか〜。なによりも美味しいから文句はないかなぁ。

設備が新しくなきゃ絶対イヤ!な人は、ともかくとして、宿の人の対応も親しみ易い感じだし、お湯も風呂もいいし、掃除は出来ているし、料金も安いから、雪深い温泉宿に逗留して癒されたいと考えている人には、オススメしたいよなぁ。
なによりも気負わずに普段着のままで滞在できるのが、この宿の魅力なんだよね。