山梨県 嵯峨塩鉱泉 嵯峨塩館
2007 2 24 2人\17850

嵯峨塩館は、転落したら即死決定の深い谷を見下ろす細い山道をグングングングン登った先の人外魔境めいた山深いところにある一軒宿。それはもう山姥がご近所さんと聞かされてもそのハナシを素直に受け入れられるほどの山奥。外観は民芸調でまさに隠れ宿といった雰囲気。館内の造作は落ち着いた色調で統一され、和がベースになっているにもかかわらず、吹き抜けの高い天井、ロッキングチェアや薪ストーブに掛け時計が醸し出す山岳ロッジのような要素も違和感なく調和し、親しみやすさと品の良さがとても心地よい。言葉に例えると「鄙に稀」。民具の部品や葛を編んで作ったランプシェードや漂うお香の香りにも受け狙いのあざとさがなく、そんなところからも宿の人が、いかに洗練された感性の持ち主であろうことが容易に想像出来てしまう。泊まった部屋は「すずらん」という二階の角部屋。縦長に延べ6畳くらいの踏込み+6畳のソファとテーブルがある副室+主室10畳と超ゆとりのある造り。窓の眺めは、眼下に渓流と滝。水の流れが見えると気持ちが落ち着くので、いいね。そして対岸の木は殆どが落葉樹なので秋の紅葉はさぞや見事なのだろうな。パブリックの雰囲気は凝っていても部屋はフツーでトーンダウンという宿も割とあるのに、この宿は部屋の中の趣や備品に至るまで気遣いが行き届いていて感心した。当然、どこも掃除は完璧で、一泊二日という短い時間にもかかわらず、心の芯まで癒されてゆくのが実感できたのだ。