宮城蔵王の麓にある鎌先温泉はさほど規模の大きくない数軒の宿が集まっている。
街はずれに温泉神社があってね、湯治客が治ったお礼に奉納した松葉杖が沢山置いてあった。
これだけ沢山あるということは外傷の回復に大変効果があるという証なんだろうね。
たいていの宿が自炊部も併設しているのでなんとも長閑な印象があっていいんじゃないかい。
歓楽的なものが目的の人にしたら、死ぬほど退屈な場所に写るかもしれないけれど、
宿にいる時間はとにかく静かに過ごしたい自分には素敵な環境だなぁ
木造二階建ての本館の風情がいいねぇ。
この宿の主人は古い物を大切に残してゆこうという考えの人なんだって。
木造三階建てのような迫力や壮麗さは感じられないんだけれどね、
ちょっとした遊び心みたいな意匠が施されていたよ。
媚びるような民芸調の演出をしていないのもいいね。
基本的な骨格は数百年前のものなんだって。
ありきたりな表現でイヤなんだけれど“素朴”な味わいがあるね。
木の持つチカラみたいなもんなのかなぁ…、こういう建物にいると
なんだか気持ちが落ち着いてくるんだよね。
客室は6畳間。リニューアルされたばかりみたいでキレイだし、一人にはちょうどいい広さ。
ただ、向かいの宿の部屋と向かい合っているもんだからお互いに中が丸見えなんだけれど
この温泉地の持っている長閑な雰囲気ためかなぁ、気にならなかったよ。
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